がん治療後の腟の乾燥・性交痛・尿トラブル。それ、GSMかもしれません 乳がん・婦人科がんの治療とGSM(閉経関連尿路性器症候群)の関係

「がんの治療を始めてから、腟が乾燥するようになった」

「性交すると痛い。でも、がんの治療とは関係ないと思っていた」

「最近トイレが近い。年齢のせい?」

がんの治療中・治療後に、このような変化を感じている方はいませんか?

実は、これらの症状にはがん治療による女性ホルモンの変化が関係していることがあります。

その代表的なものが、

GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連尿路性器症候群)

です。

GSMは閉経後の女性だけの問題と思われがちですが、がん治療によって女性ホルモンが低下した場合にも起こることがあります。

GSMって何?

女性ホルモン、特にエストロゲンは、月経や妊娠だけに関係しているホルモンではありません。

外陰部や腟、尿道、膀胱周囲の組織を健康な状態に保つことにも関係しています。

ところが閉経などによってエストロゲンが低下すると、外陰部や腟の粘膜が薄くなったり、乾燥しやすくなったりして、

さまざまな症状が現れることがあります。

これがGSMです。

GSMでみられる主な症状

外陰部・腟の症状
・乾燥する
・ヒリヒリする
・かゆい
・違和感がある
・出血しやすい

性生活に関する症状
・性交時に痛い
・挿入しづらい
・性交後に痛みや出血がある

尿に関する症状
・トイレが近い
・急に尿がしたくなる
・排尿時に違和感がある
・尿路感染(膀胱炎)を繰り返す

「婦人科の症状」と「泌尿器の症状」が一緒に起こることがあるのが、GSMの特徴です。

なぜ「がん」とGSMが関係するの?

がんそのものがGSMを起こすというより、がんの治療によって女性ホルモンの状態が大きく変化することが関係します。

特に関係が深いのが乳がんです。

乳がんの中には、エストロゲンなどの女性ホルモンを利用して増殖する「性ホルモン受容体陽性乳がん」があります。

その場合、がんの再発などを抑えるために、女性ホルモンの働きを抑える治療が行われることがあります。

がんを抑えるためには非常に大切な治療です。

一方で、女性ホルモンの作用が低下することで、外陰部や腟、尿路にも影響が現れることがあります。

閉経前でもGSMになることがあります

ここはぜひ知っておいてほしいポイントです。

GSM=閉経した高齢女性だけの症状ではありません。

乳がん治療では、

・抗ホルモン療法
・卵巣機能を抑える治療
・化学療法

などによって、閉経前の女性でも女性ホルモンが低下することがあります。

そのため、30代、40代など本来自然閉経を迎える前の年代でも、がん治療をきっかけにGSMに似た症状が現れることがあります。

「まだ閉経する年齢じゃないからGSMではない」

とは限らないのです。

婦人科がんの治療後にも起こることがあります

子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんなどの婦人科がんの治療後にも、外陰部や腟の症状が起こることがあります。

卵巣を摘出した場合には女性ホルモンが急激に低下します。

また、骨盤への放射線治療を受けた場合には、女性ホルモンの低下だけでなく、腟粘膜や周囲組織の変化、腟の狭窄などが症状に関係することもあります。

つまり、同じ「性交痛」「腟の違和感」でも、原因は一人ひとり違います。

「がんが治ったんだから仕方ない」と我慢していませんか?

がん治療では、当然ながら命を守ることが最優先になります。

そのため、

「腟が乾燥する」
「性交すると痛い」
「外陰部がヒリヒリする」
「トイレが近くなった」

といった症状は、どうしても後回しになりがちです。

また、患者さん自身も、

「がんとは関係ないことだから」

「命に関わる症状ではないから」

「性のことを主治医に相談するのは恥ずかしい」

と、相談せずに我慢してしまうことがあります。

でも、こうした症状もがん治療に伴って起こる身体の変化のひとつかもしれません。

「がん経験者だから治療できない」とも限りません

もうひとつ知っておいてほしいのが、

「がんになったことがある=GSMの治療が何もできない」ではない

ということです。

以前は、乳がんなど女性ホルモンと関連するがんを経験した方では、ホルモンを使用する治療を一律に避ける傾向がありました。

現在は、がんの種類、ホルモン受容体、治療歴、現在使用している薬剤、GSMの症状などを確認しながら、治療方法を個別に考えることが重要とされています。

保湿剤や潤滑剤などの非ホルモンケアをはじめ、症状によっては骨盤底へのアプローチなどもあります。

また、局所ホルモン治療についても、すべてのがん経験者が一律に使用できないわけではありません。

必要に応じて、がん治療を担当している医師とも相談しながら判断します。

大切なのは「何が原因なのか」を診てもらうこと

腟の乾燥、性交痛、外陰部痛、頻尿などがあっても、すべてがGSMとは限りません。

例えば性交痛には、

腟・外陰部の乾燥や萎縮、骨盤底筋の過緊張、感染や炎症、皮膚疾患、放射線治療後の組織変化など、さまざまな原因があります。

頻尿や排尿時の違和感にも、尿路感染症や過活動膀胱など別の病気が隠れていることがあります。

だからこそ、

「年齢のせい」
「がん治療をしたから仕方ない」

と自己判断せず、一度相談してみることが大切です。

がん治療後の生活も、大切な医療です

がんを治療すること。

再発を防ぐこと。

もちろん、それが最も重要です。

でも、その先の生活も同じように大切です。

腟の乾燥や性交痛、外陰部の不快感、頻尿などによって、仕事、外出、睡眠、パートナーとの関係などがつらくなっているのであれば、

それは「我慢するしかないこと」ではありません。

がん治療後に起こった身体の変化も、医療者に相談していい症状です。

女性医療クリニックLUNAでは、婦人科と女性泌尿器科の両面から、外陰部・腟・性交痛・排尿症状などについて診療しています。

がん治療中・治療後で気になる症状がある方は、「こんなことを相談していいのかな」と思わず、ご相談ください。

※がん治療中・治療後の症状や治療方法は、がんの種類、治療歴、現在使用している薬剤などによって異なります。

必要に応じて、がん治療を担当している医師と連携しながら診療を行います。

 

2026.9.1
理事長 関口由紀