パラメディカルピグメンテーション相談外来
先天的な皮膚疾患や後天的に受けた外傷による瘢痕などの再建を、アートメイクの技術を用いて行う治療です。アメリカでは1970年代より行われている技術で広く浸透しており、近年日本でも注目されてきています。つまり、美容で行われているアートメイクを医療目的にしたものがパラメディカルピグメンテーションなのです。
平成17年に医療法が改定され、アートメイクは医療行為なので医師又は医師の指示の下、看護師が行うものとなりました。そして、平成25年6月に当院はLUNAメディカルビューティーセンターを開設し、赤羽根優子マネージャーとの出会いがあり、そして、それはパラメディカルピグメンテーションとの出会いでもありました。その当時、自分は大学病院の乳腺外科医になり10年が経っていましたが、正直この技術は知りませんでした。特に、女性において乳頭乳輪は重要なものであり、それをこのパラメディカルピグメンテーションの技術で再建出来、そして完成度の高さに感銘を受けました。赤羽根さんの話しでは、アメリカにおけるパラメディカルピグメンテーションはかなり浸透されているが、日本においては認知されていないとのことでした。
自分はこのパラメディカルピグメンテーションを日本でも多くの方々に知ってもらうように、現在まで数々の分野の学会で発表をしてきました。また、日本におけるパラメディカルピグメンテーションは、医療者が独学で学び施行している施設が多く、施設により技術に差があるのが現状でした。当院の医師と看護師はBio-Touch社パラメディカルピグメンテーションセミナーを受講し、技術の習得し、医療者による高い技術の習得・教育システムの構築を進めてきました。少しずつですが世の中にも認知され、平成28年12月には、がんの専門誌である『がんサポート』に取り上げてもらい取材を受けるまでになりました。そして、LUNAメディカルビューティーセンターの協力のもと、医療従事者と患者様向けに、非常に分かりやすく書かれた『ART MAKE GUIDE BOOK』を監修しました。
現在では、多くの施設でパラメディカルピグメンテーションが導入されるようになりました。パラメディカルピグメンテーションの適応疾患としては、外傷後の傷跡・熱傷によるケロイド・白斑に対してのカモフラージュ、頭髪脱落部位のカモフラージュ、口唇口蓋裂の術後に対し唇のカモフラージュ、乳輪縮小や陥没乳頭の術後に乳輪の輪郭のカモフラージュ、乳がん術後の乳輪乳頭の再建などです。特に当院で力を入れているのは、抗癌剤治療の副作用である眉脱毛に対してのパラメディカルピグメンテーション(アートメイク)です。
がんの治療において、抗癌剤は重要なものの1つです。手術前や手術後の抗癌剤治療はある一定の期間の投与であるので、一時的に脱毛をしますが、抗癌剤の投与が終われば、また自然に頭髪・睫毛・眉毛は生えてきます。しかし、残念ながら再発してしまった患者さんは、長期に抗癌剤投与が必要になるので脱毛は続きます。特に、この脱毛だけは避けたい患者さまもおられ、脱毛の頻度が低い抗癌剤を使用しますが、その分、治療の選択肢は少なくなってしまいます。また、この脱毛の対策としては、頭髪に対してはウィッグ、睫毛に対してはツケ睫毛、そして眉毛に対してはパラメディカルピグメンテーションがあるのです。
がん治療の分野において、今、もっとも注目されているものはアピアランスケアです。アピアランス(appearance)とは広く「外見」を示す言葉で、アピアランスケアとは抗癌剤治療などによる、がん患者さんの外見に関する諸問題を医学的・技術的・心理社会的支援をすることです。『がん患者に対するアピアランスケアの手引き(金原出版)』において「化学療法による眉毛の脱毛に対してアートメイクは有用か」は推奨グレードC1bと低い推奨とされているのが現状です。今後はこのエビデンスレベルの向上に寄与したいと思っています。パラメディカルピグメンテーションが多く行われるようになったことは喜ばしいことですが、やはり安全性や副作用に対しての対処などは非常に重要と考え、今回、当院ではパラメディカルピグメンテーション相談外来を開設にいたりました。最後に、アートメイクを美容から医療へのかけ渡しをすることが、これからの自分の仕事であり、パラメディカルピグメンテーションを通して、少しでも多くの患者さんの笑顔に貢献できるように努力していきたいと思います。
がん患者用 診療情報提供書
がん治療中でアートメイク・パラメディカルピグメンテーション相談外来ご希望の際は、
専用の診療情報提供書をダウンロードし、主治医に記載して頂き、ご予約のうえご持参下さい。
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>LUNAメディカルビューティーセンター