コラム

40歳を過ぎて、全身の関節が痛くなった貴方へ

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私は、女性泌尿器科医として
間質性膀胱炎/慢性骨盤痛症候群という疾患を長く診ています。この病気、膀胱の粘膜が弱くて常に頻尿や下腹部痛がある病気です。
普通の泌尿器科医は、膀胱を診るのが好きで、膀胱の治療をするのが好きなので、
膀胱鏡による診断や、膀胱鏡下での操作での治療が好きです。
一方私は、以前から漢方薬等の飲み薬の治療が好きだったり、女性医療にも積極的に関わっているので、全身を診るのが好きなんです。それでどんどん治療性向が、慢性疼痛症に向いていき、結局は線維筋痛症を治療するに至りました。線維筋痛症は、原因不明の疾患ですが、だいたい最初は、全身のどこかに小さな炎症と痛みが発生。(現代医学では、そんなに熱心に治療すべき炎症ではないことがほとんどです。熱心に治療すべき疾患、例えば悪性腫瘍や、骨折、リューマチ・膠原病などと診断された場合は、その治療が優先されます。)
普通は、小さな炎症は、時間が経つと消失し、痛みも改善するんです。
しかしなんらかの原因で、この炎症と痛みが持続してしまうと、脳の痛みに対する感受性が変化し、痛みを感じやすくなり、炎症のないはずの、局所の炎症巣の周囲も痛くなってしまう人がいます。つまり痛みの領域が広がっていくのです。この状態が、慢性疼痛症です。局所性の慢性疼痛症の段階で、脳の知覚過敏を抑えることができれば、痛みは再び炎症のある局所だけに戻り、局所のケアだけを行えばよくなるのですが、脳の知覚過敏を抑えることができず、慢性疼痛を強く、頻繁に感じる生活を送っていると痛みの領域は、どんどん広がって行きます。
そして痛みの領域が全身に広まってしまった状態を線維筋痛症と呼びます。ですから線維筋痛症の治療は、脳の痛みに対する感受性を正常化して、さらに脳が痛みを感じる頻度と量をできるだけ少なくすることが治療になります。
そのために脳の痛みの感受性を正常化する薬(SNRIや三環系抗うつ剤)や、痛みの入力を低下させる薬(リリカやガバペン)の服用が、必要になることがあります。これらの慢性疼痛治療の第一選択薬で痛みの程度が、80%以上改善しない場合は、オピオイド系(麻薬系)鎮痛剤などを使用することがあります。さて脳の痛みの感受性を変化させる大きな原因の一つに、性ホルモンのバランスの変化と加齢による身体のストレス耐性の変化があります。

40歳をすぎると、女性の卵巣機能は、それ以前にくらべて変化します。
だいがいは、45歳くらいまでは妊娠できる最後のチャンスなので、女性ホルモンの分泌が過剰になったり、でもチョッピリ卵巣が疲れてきて月経が不規則になったりします。
そして45歳過ぎたころから女性ホルモンの分泌は減少し、閉経へと向かっていきます。
一方体に関しては、35歳くらいをピークに加齢によりそのストレス耐性は低下していきます。(つまり体力はなくなっていきます。)このストレス耐性が低下した体に過剰な女性ホルモンと過労が加わるとまだ更年期(大体45〰55歳)ではないのに、更年期障害のようなイライラや抑うつ、慢性疲労などの症状が起きることがあります。このような状態が、プレ更年期と呼ばれることがあります。そして45歳をすぎて体力の低下とともに、本当に女性ホルモンの低下が始まると、正真正銘更年期障害が起こってきます。更年期障害の症状は、すべて心と体の知覚過敏であると説明するとわかりやすくなります。ホットフラッシュや抑うつなどは代表的症状ですが、皮膚が痒くて、ナイロンの下着が着れなくなったり、臭いが気になって、電車に乗れなくなったり、夫に近寄らなくなったりすることがあります。そしてそろそろ筋肉量が低下して、関節の筋肉によるサポートが以前より弱くなっている女性の間では、気候の変動や過労で、関節痛がでてくることがあるのです。(やっと、本日のお題まで行きつきました。)40歳すぎて、全身の関節が痛くなった貴方は、まず整形外科に行って、リューマチや変形性関節症がないかどうかをチェックしてもらったほうがいいでしょう。
そしてそれらの病気がある場合は、それらの治療を優先したほうがいいです。
一方整形外科で、原因がはっきりしないと言われた場合は、婦人科、女性内科、女性泌尿器科などで女性ホルモンのチェックをしたほうがいいでしょう。
そして女性ホルモンの低下が認められる場合は、女性ホルモン補充療法をおすすめします。
女性ホルモン補充療法で、全身の関節痛が、すっかりよくなる人がたくさんいます。
痛みの継続期間が長い場合は、前述の慢性疼痛症の治療を併用したほうが効果的な場合もあります。しかし女性ホルモン補充を受ければ全ての問題が解決するわけではないんです。
筋肉量をアップして、関節の筋肉によるサポートを維持するために、痛みが改善してきたら定期に運動することが必要です。
またそれまでの人生で食事に気を使っていなかった人は、筋肉のもとになる良質なタンパク質とミネラル豊富な野菜を食べる努力を開始する必要があります。関節に負担をかけないためには、体重コントールも必要です。そして何よりも脳内のセロトニン濃度を維持するために、自分を肯定して、前向きに生きるためのメンタルトレーニングが重要になってきます。40歳〰70歳の女性は、子育ても一段落し、人生でもっとも楽しい時期を迎えていますが、この期間に、しっかり自分の心と体のケアを自分自身で行う習慣をつけることが、70〰100歳の人生をゆたかにする鍵です。
2018年9月にオープンする女性医療クリニックLUNA ネクストステージでは、このあたりにこだわりたいと思っています。

女性医療クリニックLUNAグループ 関口由紀理事長