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女性と漢方 -女性内科-

はじめに

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LUNAでは、西洋医学と東洋医学の融合を開院当初より目指しています。あえて、東洋医学科というような別の概念・診療科目は設けず、それぞれの医師が自分の専門性をより効果的に、また患者さま個人個人の特性を考慮しやすいように、西洋と東洋の両面から診察をさせていただいております。

例えば、50歳前後に起こりやすい更年期障害という概念は、婦人科でも内科でもお受けできます。
主に、婦人科系の疾患(子宮筋腫など)の有無(その確認も含めて)で診療科を分けています。

婦人科で、婦人科的な疾患は特に見つからず、なんとなくいつもだるさや冷えのぼせなどの愁訴を感じている場合は内科で診療いたします。
どの科がより自分に合うか判断できない場合は、ご予約の際にお電話にてご相談下さい。

女性と漢方(東洋医学) No.1

漢方の有効性

院長は、医師としては、東洋医学と西洋医学の二足わらじをはいて、10年以上になります。なぜかといえは、QOL医療である女性医学においては、患者が自由に自分の意思で選べる治療の選択肢がたくさんあったほうがよいと感じているからです。
また、女性である自分自身にとっても両方の医学が必要であると感じています。疲れた時、風邪気味の時、生理痛の激しい時など日常的に利用する医学としては漢方がとても有効です。しかし重症になってくると現代の最新医療が有効な場合も増えてきます。
この両方の医学のいいところを利用できるのが、現代に生きる私達のメリットでしょう。

漢方で未病とは

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「あの人は、体が丈夫なのよ。」とか「あの人は、体が弱いのよ。」と日常的に人はよくいいます。
しかし医師は、なかなか体が弱いという言葉を用いません。これは西洋医学的には、検査で明らかな異常がなければ、異常とはいえないからです。そのため、症状があるのに「あなたは正常です、あなたの症状は気のせいです」とか言われ、苦しんでいる人はたくさんいます。

東洋医学には、未病という言葉があります。この未病という言葉、自覚症状はあるけれど、まだあきらかな臨床的な異常がない状態をさしており、正常から異常への移行状態をさしています。東洋医学的には、以前より広く治療の対象になっていた未病ですが、西洋医学でも死ぬ心配はないが生活していく上でとても困る QOL疾患という概念が広まるにおよんで、だんだん以前は気のせいだった病気の多くが、西洋医学的な病名をつけられて、認識されるようになっています。

人間の寿命はほぼ100年

西洋医学のもう一つの代表的な特徴が、生命予後をよくすること、つまり1日でも長く生かすのが最も重要な価値であるということがあります。あまりにも生命予後にこだわりすぎ、寝たきりでも、意識がなくてもとりあえず生きてさえいればよいというところまで西洋医学はきて、ついに生きてさえいればよいのか、その生活の質を問わなくてよいのかいう反省をもととして1970年代にQOL医療が勃興したわけです。

一方東洋医学では、以前よりあまり延命に熱心ではありませんでした。なぜならば、ほぼ古典的な書物が完成された時点で、人間の寿命はほぼ100年であると決めているからです。もちろん100歳以前に死なないために過労やストレス、病気を避けるように”養生”が説かれます。
東洋医学の根本原理は “かぎりある100年の人生をあまり無理したり、極端に卑下したりせず、適当なところで謳歌する” という考え方なのです。  

女性と漢方(東洋医学) No.2 「証と腎」   

虚証と実証

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漢方医学では、虚証という言葉があります。これは病気に対抗する力が弱いことを示します。この反対に病気に対抗する力が過剰であることを実証といいます。

和漢医学(日本の伝統漢方のこと)では、この虚証と実証という性質を個人の個性として認識し、治療の参考にしています。
西洋医学的には“体が強い”が “体が弱い”より価値があり、また“強さ”は強ければ強いほど価値が高いわけですが、東洋医学的には、そんなことはまったくありません。
弱すぎるのと、強すぎるのが病気で、中庸、つまり真ん中やほどほどが正常なのです。

東洋医学では、人が健康を維持するために必要なことは、自分の心と体が、中庸から比べて今どのくらい虚方向や実方向にかたよっているかを認識する自己認識力と、このかたよった所から中庸に戻すための自己管理能力です。
さらにこの二つの力を発揮するために必要なことは、自分の心と体を返りみることのできる休養時間の確保と、時間的に規則正しい生活です。具体的には、最低、起床時間と就寝時間さらに食事時間は、毎日一定にする必要があります。

“腎気”と”腎虚”

老眼、難聴、腰痛、頻尿、性機能障害、冷えなどの老化による諸症状は、末梢の臓器と視床下部・下垂体系の加齢による機能低下のことを、漢方では腎虚といいます。

もともと”腎気”という概念が漢方医学にはあり、これは先天的に生まれた時からもっている生命エネルギーの総称です。この生命エネルギーの不足が”腎虚” です。(これに対応する概念が、脾虚で後天的に摂取するエネルギーの不足のことで食欲が低下している時などに起こります。単に気虚というときは後天的なエネルギー不足を指しているこの脾虚を示すことが多いのです。)

腎虚に効く漢方薬には、八味地黄丸、牛車腎気丸、六味丸、清心蓮子飲などがありますが、40歳以上の人は仙人のようなよっぽど健康的な生活を送っている人以外は、多少はこの腎虚になっていますので、これらの漢方薬は、人生のいろいろな場面で、補給してよいラインナップといえるでしょう。つまり補腎の諸薬は老化予防薬(アンチエージングドラッグ)でもあるのです。

女性と漢方(東洋医学) No.3 「気血水」

“気虚”と”お血”

“気”というのは生きていくのに必要な生命エネルギーです。この生命エネルギーが少なくて、元気がない状態が”気虚”です。
“気虚”になると、なんとなく元気がなくてダラッ~としてしまいます。もっと元気を出して一生懸命なにかをしたくても、その力が出ないのです。さらにこのダラッ~とした状態が長く続くと、体の血のめぐりが悪くなってきます。この血のめぐりが悪くなって、痛みがでることを漢方では”お血”というのです。”お血”は、西洋医学的には、女性の更年期などにおこるホルモンバランスの失調や、動脈硬化による微小循環不全の際に起こると考えられます。
気虚を治療する漢方薬には、補中益気湯、六君子湯、人参湯などがあります。またお血を治療する薬には、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯などがあります。

“水”の異常と冷え

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感染をしやすいという性質を、漢方的には”水”の異常と考えます。

“水”とは、透明な体液の総称です。西洋医学的な説明をすれば白血球などを含む免疫系を総称する概念です。漢方では、この”水”の流れが滞り、ある特定の部分に偏在することが、病気の原因と考えられています。
むくみ、頭痛、めまい、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、喘息、肩こり、動悸、下痢、頻尿などは、全て”水滞”が原因とされています。この”水滞”を改善する漢方薬としては、苓桂朮甘湯、五苓散、猪苓湯などがあります。

さらに、この”水滞”の患者は、みな季節の変化に弱く、急な気温の低下などで症状がとても悪化します。よって”冷え”を改善する漢方もとても効果を発揮します。”冷え”を治療する漢方薬は、安中散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、苓姜朮甘湯などがあります。 

女性医療クリニックLUNAグループ
理事長 関口 由紀